黄・金・色・猫
「と、言うわけで、オレ達に種明かしされてようやくお前のリクエストの意味を理解したんだぜ、こいつ」
「全く、鈍感もここまで来ると大したもんだよね」
シュラとアフロディーテは簡単にミロに経緯を説明し、からかうような視線をアイオリアに向けて笑った。
否定できないアイオリアは仏頂面で黙っていることしかできなかったが、ミロはそんなアイオリアの顔を興味深げに見遣った後、
「うん。でもオレも多分自力では気付いてくれないだろうなとは思ってたから、それは予想通りかな」
アフロディーテとシュラに向かってそう言って、くすっと小さく笑った。
「気付いてもらえないだろうとわかっていながら、どうしてそんな回りくどい物言いをしたんだよ? お前」
「そうだよ。あの時偶々私達が通りがかっていなければ、もしかしたらアイオリアは未だにお前の真意に気付かぬまま今日を迎えてたかも知れないんだぞ」
どうやらシュラの推測は見事に的中したようであるが、シュラにしてもアフロディーテにしても『多分気付かないとは思っていた』というミロの心境が単純に疑問だった。
「アイオリアが自分で気付いてくれたら儲け物、気付いてくれなくても今日までの間に多分誰かが助け舟出してくれるだろうって思ったからね。実際その通りになったじゃん。アフロディーテとシュラが、こうして助け舟出してくれただろ」
単純明快に答えて、ミロは二人に無邪気な笑顔を向ける。
今回は偶々いいタイミングで二人が通りかかり助け舟を出してくれたのでこういう結果になったが、もしそれがなければギリギリのところでアイオリアが誰かに助けを求めたであろうから、恐らく結果は同じだっただろうとミロは思っていた。
「でもわざわざ届けに来てくれるとまでは思ってなかったけどね」
付け加えるようにミロが言うと、二人は同時に微苦笑を浮かべ、
「放っておいてもよかったんだが、何かちょっと心配だったんでな。こいつの場合、堂々と『プレゼント、オレ!』なんて言えないだろうし、すごいグダグダなことになるのが目に見えてたっつーか、何つーか……」
な、とシュラが隣のアフロディーテに同意を求めると、アフロディーテもシュラの言に全面的に同意して頷いた。
「それじゃもしかして……もしかしなくても、これくっつけてくれたのもシュラとアフロディーテ?」
聞き返しながら、ミロがアイオリアの首に可愛らしく巻かれている赤いリボンを指先で突く。
するとリボンの中央につけられた鈴が、チリンと軽やかな音を響かせた。
「もちろん! プレゼントなんだから少しはそれらしく装飾しなきゃ味気ないだろ」
「それに猫に鈴はつきものだし、ね」
別につきものというわけではないのだが、二人は完全お遊び気分でアイオリアにリボンと鈴をくっつけて『可愛くデコレート』してあげたのである。
先刻からアイオリアが不機嫌全開の仏頂面をしているのは、問答無用――というより言葉巧みに言い包められてこんなものをくっつけられてしまった気恥ずかしさも大きな一因となっていた。
「サンキュー!」
ミロは礼を言って、二人に満面の笑みを向けた。
その笑顔をみてシュラは小さく頷いて、
「それじゃ、我々は任務完了ということで」
言うなりシュラはミロの傍に歩を進め、
「誕生日おめでとう」
ミロに祝いの言葉を贈ると、ミロの頬に軽くキスをした。
「ちょっ…、シュラっ!!」
それを見たアイオリアが慌てて怒り混じりの声を上げると同時に、今度はアフロディーテがミロの傍に歩み寄り、
「よい誕生日を」
そう言って反対側の頬に、シュラと同じように軽くキスをした。
「アフロディーテ!」
今度は怒り100%の声を張り上げたアイオリアだったが、シュラとアフロディーテは全く意に介した様子も見せず――というよりガン無視を決め込み、ミロはと言えば大きな目をきょとんと丸めているだけだった。
「じゃあな」
二人は声を揃えて言うと、踵を返してさっさと天蠍宮を後にしていった。
「まったく……二人揃ってどさくさに紛れて……」
憤然と二人の背を見送った後、アイオリアが改めてミロに向き直ると、すぐに自分を見つめているミロの視線とぶつかった。
ミロはこれまでとは一転、透き通るような薄青色の瞳を物言いたげに揺らめかせてアイオリアの緑の瞳をただじっと見つめている。
鈍い鈍いと散々貶されたアイオリアだが、この時ばかりはミロの無言の訴えを正確に理解した。
ミロを見つめる目を愛しげに細めると、アイオリアはミロの腰を引き寄せてその身体を包み込むように両腕の中に収めた。
自分の意志が伝わったことを見て取ると、今度はミロの目が嬉しそうに細められる。そしてミロはまっすぐにアイオリアの瞳を見つめたまま、彼の背に両手を回した。
アイオリアはそんなミロに微笑み返し、優しくその髪を撫でた。
「誕生日おめでとう」
そしてアイオリアはミロにもう一度祝いの言葉を贈り、その唇にキスをしたのだった。
post script
HAPPY BIRTHDAY ミロ!
とにかくミロを猫っ可愛がりしたい一心で書きました。
あんまいつもと変わり映えしないっちゃしませんが(笑)、読んでいただいた後に「うぉー! にゃんこズ可愛えぇモフリてぇーーーーー!!!」みたいになっていただけたら嬉しいです。
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