闇の中の真 交錯する偽

「ガキに温情をかけるなんて、随分とお前らしくないことをしたもんだな、アフロ」

見張りの雑兵に「気が済むまで一緒にいさせてやれ」と言い置き、十二宮に戻ろうとしたアフロディーテの前に姿を現したデスマスクは、ニヤニヤと楽しげに笑いながらからかうようにそう声をかけた。

「お前だってシャカがここに来るよう仕向けたじゃないか、デス」

「別に仕向けたわけじゃねえよ。オレはむしろ追い返そうとしたんだがな、あのガキが思い通りに動いてくれなかっただけだ」

ま、これはこれで面白いからいいけどな〜と、デスマスクは楽しげに笑い声を立てた。

「で? どうするんだ?」

「どうするって何が?」

「この件、教皇に報告するのか?」

デスマスクに問われたアフロディーテは、だが即答せずにしばし思案顔で沈黙した後、

「報告せぬわけにはいくまいな。私達が黙っていたところで、遅かれ早かれ教皇の耳に入ることだ」

「確かにその通りだが、いいのか? シャカだけじゃなくお前も教皇にお咎め食らうかも知れないんだぜ?」

隠し通せるか否かはともかく、黙っていた方がいいんじゃなないのか? とデスマスクは暗にアフロディーテに忠告めいたことを言った。

「それはどうかな?」

「あん?」

「お咎めを受けるかどうか、それは教皇の『気分次第』……だと思うぞ。私も、シャカもな」

余裕綽々な様子で意味ありげに言い、アフロディーテはニヤッと唇の端で笑って見せた。
それを受けて彼の真意を理解したデスマスクも「違いねぇ」と短く応じ、ニヤッと唇の端を釣り上げた。


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エピゼロ本に寄稿した作品の別バージョンのような話ですので、フォーマットはほぼ同じです。


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