「そんな「いいよね答えは聞いてない!」な妻の意思ガン無視の強引な手法でアイオロスは休暇をもぎ取り全ての段取りを勝手に決め、結婚後初めての妻の誕生日を夫婦二人きりで満喫すべく結婚式を挙げた地でもある東京へ来ていた。
「妻の誕生日を祝う為というのなら、少しはその妻の意見も聞いてやれよ……」と、一方的かつ問答無用でその記念日休暇の穴埋め役を押し付けられたデスマスクの至極まっとうな意見は綺麗にスルー、同じく一方的かつ問答無用で穴埋め役を押し付けられたシュラの「大都会なんて他にもいくらでもあるのに何でまた東京? 結婚式の時に行ってるんだし、どうせなら行ったことのない場所にすればいいのに。例えばニューヨークとか……」という意見に対しては「結婚式は全て女神のご手配で自分達はほぼ身一つで行っただけだったから、実は碌に東京観光をしてない。行ってみたい場所はたくさんあるし、何より日本は食べ物が美味しい。これは大事なことだからな」という理屈(屁理屈)を捏ねて黙らせ、アイオロスはサガを伴い意気揚々と旅立ってきたのだった。
後を押し付けた二人には、一応申し訳程度に「お土産奮発してやるからな」と言い残しては来たのだが――。
「繁忙期でなかったからまだよかったが、お前は時々周りの迷惑も顧みず自分勝手に強引なことをしでかすな」
東京に滞在して今日で二日目。
ここに来てようやく詳細に事の次第を聞いたサガは、都心の高層ホテルの最上階の部屋で足元に広がる人工光の星屑のような都会の夜景を見下ろしながら、呆れ果てたようにアイオロスを窘めた。
とはいえ、サガがこの旅行のことを聞かされたのも全てのお膳立てが済んだ後で、意見を言う間もなければ突っぱねることもできず、結局こうやっておとなしくついてくる以外になかったわけだから、事前にそれを知っていたからとてどうにもできなかったことに変わりはないのだが。
「だから借りを作ったら厄介そうなのには頼まなかったんじゃないか。とは言ってもそんなに大迷惑をかけてるわけでもないし、シュラとデスマスクだからちょっと土産を奮発してやれば大丈夫だ問題ない、心配するな」
借りを作ったら厄介そう――な人間の名前まではさすがにアイオロスも口にはしなかったが、彼的にシュラとデスマスクが気安い相手であることは間違いない。
尤も気安くあれこれ頼まれること自体が大迷惑だとサガは思うのだが、今更何を言ったところで後の祭りというやつである。未だ釈然とはしないが、ここまで来てしまったからにはアイオロスの言うようにお土産を奮発するより他、彼らに埋め合わせをする術がないこともまた事実である。
「結婚して初めての誕生日だからと言って、何もこんなに大袈裟にすることもなかったろうに。しかも他人に迷惑をかけてまで……」
私はお前が傍にいてくれさえすればそれだけでよかったのだから――と、はにかむようにサガは言った。
それを聞いたアイオロスは嬉しそうに微笑み、
「お前ならそう言ってくれるだろうと、わかってはいたんだがな。でもさ、結婚式も入籍も全部オレの誕生日に合わせてくれただろう? それだけやってもらっておきながらお前の誕生日はシンプルになんて、オレの気が済まなくてさ。さすがに同じようにってわけにはいかないけど、お前の誕生日もそれなりに盛大に祝ってやりたかったんだ。せめて結婚して、最初の誕生日くらいはな」
強引にかつサクサク事を決めて進めたように見えてはいても、アイオロスはアイオロスなりに考えに考え抜いた上で計画を立て、特に仕事面に於いて決して周りに迷惑をかけぬようきっちりと根回しもして(と言いつつシュラとデスマスクは結構な迷惑を被っているわけだが、アイオロス的にはそれはノーカウントらしい)万全を期してはいたのである。
「お前の気持ちは素直に嬉しいのだがな」
「それなら素直に楽しんでくれ。余計なことは考えるなよ」
そう言ってアイオロスはサガの身体を抱き寄せ、その唇を塞いだ。
数回その唇を啄むように味わってから、一転してそのキスと深く濃密なものへと変化させる。
侵入してきたアイオロスの舌はサガの舌を捉え、激しく絡め取った。
「んっ……」
唇の端から一筋の唾液と、サガの吐息交じりの微かな声が零れ落ちる。
ほんのりと艶気を帯びたその声がアイオロスの鼓膜を擽り、彼の情欲を掻き立てた。
「……あっ……」
アイオロスの手がサガの着ているシャツを徐々にはだけていき、それを追うようにサガの唇から離れたアイオロスの唇が耳元から首筋、鎖骨を辿り、所々に小さな刻印を残しながら胸元へと滑り落ちてくる。
この二日間でサガの身体にはもういくつもの赤い印が刻まれ、日本はもう汗ばむ季節だというのに襟が広く開いた服が着れないような有様であったが、アイオロスはそんなことに気遣いもせず――というより、むしろ喜んでそれを残しているような節すらあった。
「アイオロス……こんな、ところで……」
身体の芯からじんわりとした疼きが広がってくるのを自覚したサガは、性急に先へと進もうとするアイオロスをやんわりと制止した。
サガは天井から床までの全面窓に背を凭せかけるような形で、アイオロスのキスと愛撫を受けている。都会の夜景を眼下に一望出来るよう作られているその窓は、言わずもがな開放感が高い。僅か数センチのガラスの向こうはすぐに屋外という、そんな場所で行為に及ぶことにサガは強い抵抗感を覚えたのだが、
「大丈夫だ。こんな高い場所だぞ、外からなんか見えやしない」
アイオロスはサガの控えめな拒絶を軽く一蹴した。
だが外から覗くことなど不可能な高層ビルの最上階であることはもちろんサガにもわかっているし、そもそもそんな心配など欠片もしてはいない。
「バカっ! そんな問題では……っ!」
だが皆まで言う前に、サガは息を詰まらせ身を強張らせた。
アイオロスの指が、いきなりサガの乳首を摘んだからである。そこから瞬時に走った鋭く小さな痺れが、サガの言葉の先を遮ったのだ。
「んっ……や、め……」
アイオロスは更に強くサガの背を窓に押し付けると、摘んだ乳首を翫び始めた。
摘まれ、左右に捏ねられ、指の腹で摩ったり押しつぶされたりしたサガの乳首は、瞬く間にぷっくりと膨らみ勃ち上がった。
「気持ちが落ち着かないのはほんの一時だけだ。すぐに気にもならなくなる、大丈夫だ」
気持ちの問題であることはアイオロスもどうやら理解はしていたようであるが、いずれにしてもサガの意向を聞き入れる気が一切ないことだけは確かなようである。
アイオロスは赤く熟れたサガの乳首を見て嬉しそうに瞳を細め、今度はそれを口に含んだ。含んだ乳首を吸い、唇と歯で甘噛みをし、舌で丁寧に舐めあげる。温かな口腔内で弄ばれたサガの乳首は、ますます真っ赤に熟れて膨らんでいった。
「あっ……ん、んっ……」
胸元から拡散していく時折小さな痛みを伴う快感に、サガは堪えきれずに甘美な声を漏らす。
そんな妻の様子に気分を良くしたアイオロスは、サガの乳首を口に含み転がしながら手早く自分のシャツを脱ぎ捨てると、空いている方の乳首をも指で弄び始めた。
「ふっ……あぁっ、ん……」
アイオロスの指と掌、唇と歯と舌とに両乳首を間断なく刺激され、サガは眩暈に似た恍惚感に取り巻かれた。
身体の芯からぴりぴりとするような痛痒い快さが全身に広がり、それに呼応してサガの下腹部も熱を持って膨らみ始める。
アイオロスは乳首を弄ぶ手はそのままに、首筋にキスを這わせながらもう片方の手でサガの腰を強く抱き寄せ、彼の下腹部と自分の下腹部を密着させた。
アイオロスもサガもまだボトムを履いたままだが、その布越しにもはっきりと互いの局部が熱く硬く膨張し始めていることがわかる。
「サガ、気持ちいい?」
そんな意地悪な問いかけをして、アイオロスはリップ音を立ててサガの首筋を吸った。
「……っ! ……」
増進する快感と羞恥とにますます顔を上気させながら、サガは既に力が入らなくなっている両手で弱々しくアイオロスの胸を押し返した。
意地っ張りな性格故なのか、抵抗にならない抵抗を見せるサガが本当に可愛らしくて、アイオロスは妻を見る瞳を愛おしげに細める。
密着させた下腹部のまだ厚い布の下に閉じ込められている互いの局部が、更なる熱量を蓄え突き破らんがばかりの勢いで上向き始めたことを実感したアイオロスは、真っ赤に熟した乳首からようやくその手を放すと、サガのボトムのボタンを器用に外してジッパーを下げ、素早く手を滑り込ませて熱く硬く膨らんだサガのそれをやんわりと包み込んだ。
刹那、息を詰まらせサガが首を仰け反らせる。アイオロスはその喉元に口づけ、唇と舌をゆっくりと這わせながら、同じようにゆっくりとした調子でサガの局部を扱き始めた。
「あっ……あっ、ふぅっ……んっ、んっ……」
サガの唇から絶え間なく溢れ落ちる嬌声はますます艶を帯びて心地良くアイオロスの鼓膜を擽り、苦悶混じりの恍惚の表情が浮かぶ貌はこの上もなく美しく、視覚聴覚触覚に刺激された官能が欲望を弥が上にも掻き立てていった。
直接刺激を与えられたサガの局部はアイオロスの手の中で一段と膨れ上がり、早くも先走りの雫が先端から滲み出している。
サガ自身、限界が間近に迫っていることを文字通り身を以て実感しているのだろう。溜め込んだ欲望の解放を求めて、腰が小刻みに動き始めた。
このまま手で一度イかせてもいいが――とアイオロスは考えたが、ふと思い立ってサガの局部への愛撫を止めた。
頂を目前にして突如、いわゆる寸止めを食らったサガは、閉じていた瞳を薄く開き、どうして……? と無言で問いかけるように夫の顔を見た。
そんなサガに向かってアイオロスは小さく微笑むと、今まで局部を弄っていた手でまだ腰に引っかかっているボトムと下着を一緒に下ろした。
シャツは既に脱がされボトムも足首まで下ろされ、サガはほぼ全裸となった。そのサガの前に膝をつくような形で屈み込んだアイオロスは、熱く硬く上空を仰いでいるサガの局部の根元を支えるように手を添え、先端に滲む露を舐めとった。
ブルッ! と小さく短くサガの全身が震えたのがわかる。ますます気を良くして、アイオロスはサガの局部を先端から徐々に自分の口の中へと招き入れて行った。
「っあ……ふっ、あ、んっ……あぁ……」
根元近くまで咥え込んでから、アイオロスが緩やかにサガの局部を出し入れし始める。小刻みに強弱をつけて舐めたり吸ったり、執拗なアイオロスの口の動きに翻弄されサガの理性はどんどんと失われていった。
「くっ……ふっ、あっ……」
生暖かいアイオロスの口腔内でサガのそれはますます熱く張り詰め、そこから突き上げるように登ってくる快感に切ない喘ぎを漏らす。
下肢からは次第に力が抜け、崩れ落ちそうになる身体を支えるように、サガはアイオロスの両肩に手を置いた。
「やっ……あっ……」
両肩に置かれたサガの手に、グッと力が篭った。
もうすぐだなと察したアイオロスは、添えていた手で根元を握り込み、半ばまで咥え込んだサガの局部を強く吸い上げた。
「はうっ!」
サガの身体の中心に電流が走り、局部の先端から熱い飛沫が迸った。
全てをアイオロスの口中に放つと待っていたかのように四肢から一気に力が抜け、立っていられなくなったサガはアイオロスの上に崩れ落ちた。
アイオロスはサガの身体を抱きとめ、その両腕の中にふわりと包み込んだ。
汗ばんだ素肌が密着する感触が心地良い。アイオロスは腕の中で短く不規則な呼吸を繰り返しているサガを抱き締め、美しい輝きを放つ青銀の髪に頬を寄せた。
「もう大丈夫、かな?」
それから幾許かの時間が経過し、乱れていた呼吸が整い始めた頃合いを見計らい、アイオロスはサガにそう問いかけた。
射精の後の薄い膜のような気怠い感覚に身を任せていたサガは、無言のままごく小さな頷きを返した。
アイオロスも小さく頷きを返してからサガの髪を撫で、支えるように抱きかかえたまま静かにゆっくりと立ち上がった。
サガの背を再び窓ガラスに凭せかけるようにして自立させてから、アイオロスは素早く自分のボトムと下着を脱ぎ捨て、自らも一糸纏わぬ姿となる。再びサガに身体を密着させ、頭を抱くようにして髪を撫で、キスをする。応じてサガも夫の背に緩く両腕を回し、彼の身体を抱き返した。
サガの唇、髪、額、頬、耳——に短いキスを降らせる間に、アイオロスの手は背筋を滑り落ち、筋肉で美しく引き締まった双丘へと辿り着いていた。軽くサガの片足を持ち上げ少しだけ開いた谷間に指を進入させ、その奥の秘孔を探り当てる。入口に指を押し当てると、それ以上の侵入を拒むかのようにそこが窄まり、サガの身体がまた小さく震えた。
アイオロスは固く閉ざされてしまったそこを円を描くように軽く押し、徐々に少しずつ解しながらその中へと進んで行った。
「っん、あっ……」
アイオロスの指先が新たな快感を紡ぎ出し、再びサガの唇から艶めいた声が漏れ落ちる。
頑なだった秘孔の入口は次第に柔軟性を取り戻し、進入も次第に容易になっていったが、それでもアイオロスは焦ることなく丁寧に内壁を解すようにしてそこを広げながら指を中に押し進めていった。
まずは一本の指でじっくりと、少し広がったところでもう一本指を進入させ、よりじっくりと。
「あぁっ……あ、あっん……ふっ、う……あっ……」
アイオロスの二本の指がサガの中を緩急自在に動き回り、そこから脊髄にかけて鳥肌が立つような快感が駆け抜ける。
一度イった身体は相当に敏感になっていて、鎮まりかけていた火照りが勢いを増して瞬く間にサガの理性を奪っていった。
欲望を放出しひとまず落ち着いたはずのサガの局部も、相互作用で息を吹き返し熱く膨らみ鎌首を擡げ始めた。
一方のアイオロスの局部もまた、直接的な刺激を殆ど受けていないにも関わらず、圧倒的な熱量と硬度を持って腹部に密着する勢いで勃ち上がっていた。言わずもがな、サガの嬌態がアイオロスの性的興奮を極限まで高めたからである。
これから自分を受け入れるサガの秘所が充分慣れ、解れたと判断したアイオロスは、その中から二本の指を引き抜き、即座に硬く膨張した自身の先端を入口に押し当てた。
するとサガのそこが僅かにキュッと収縮した感触が直に伝わってくる。再び固く閉ざされてしまう前にと、アイオロスは指でそこを軽く広げて、先端を切り込ませた。
「はっ……んっ!」
アイオロスは先端をサガの裡へ切り込ませると、ほぼ間髪を入れず一気に奥まで貫き局部を埋没させた。
繋がったそこから電流のような痺れがサガの背筋を駆け上がり、脳天から抜けていく。
アイオロスはそこで一呼吸を置き、汗で髪の毛が張り付いているサガの額と頬にキスをしてから、またゆっくりと腰を動かし始めた。
「ぅっ……んっ、あっ……ああっ、はぁっ……」
始動こそゆっくりだったものの、アイオロスの腰の動きは瞬時にその速度を増し、激しくサガを突き上げた。
サガの中をアイオロスが縦横無尽に暴れまわるに合わせ、脊髄に鳥肌が立つような快感が走る。繋がったそこを激しく突き上げられ、密着する腹部の間で擦られたサガの局部は一気に熱量を増して膨れ上がっていった。
「ああっ、あっ……っああ、んっ、んん……っ……はぁっ……」
絶え間なく波打つように襲ってくる快感と気の遠くなるような恍惚感に、サガは激しく身を躍らせ美しく淫靡な声で喘ぎながらも、それに飲み込まれまいと夫の逞しい身体にしがみつく。
「サガ……窓の外、見れるか?」
鼓膜に心地よい声を奏でる妻の唇にキスをしてから、アイオロスは耳元でそう囁いた。
「……え……?」
「窓の外。見てごらん」
優しく穏やかな声で促され、サガは僅かに頭を傾け、閉じていた瞳を薄らと開き窓の外を見た。
夫から与えられる快楽の余波で潤んだ瞳に、夜の闇に鮮やかに煌めく数多の光が滲んで見える。滲んで幾重にも乱反射する光が織り成す独特な効果のせいか、この時サガの目には無機質な都会の夜景が奇妙なほど幻想的に見えていた。
確かにこんな景色は聖域では見られない。いや恐らくは今、この一瞬に、たった一度だけ見られる光景なのであろう。
「綺麗だな」
アイオロスの言葉に、サガは力なくごく小さな頷きを返した。
「それにこうしていると、まるで夜空の上でお前を抱いているみたいだ」
だがアイオロスにはサガとは別の感慨があったようである。
確かに外と内を隔てているのは透明なガラス窓のみ。窓に背を押し付けているサガはともかく、夜景を見下ろす形でサガを抱いているアイオロスがそんな感覚に陥ったとしてもおかしくはない。
「んっ、あっ! ふっ……あ、あっ……あんっ……」
そんな会話を交わしてから一転、アイオロスはより一層激しくサガを貫いた。速度を上げて力強く、掻き回すかのように突き上げ、サガを翻弄する。
「あっ、あっ……んっ、ふぅっ……ああっ、ア、アイオ……ロ、ス……!」
まるで振り落とされまいとでもしているかのように、サガは必死にアイオロスの身体にしがみついた。
それによってますます密着した二人の身体の間で擦られたサガの局部が、程なくしてあっけなく破裂し、二度目の放出に至る。熱い液体が二人の腹部に滲むように拡散し、失神しそうなほどのエクスタシーがこの時サガの中を走り抜けた。
「あああっ——!」
一際高い嬌声が上がり、アイオロスの背に立てられたサガの指に食い込むほどの力が入った。
それに連動してサガの内壁が一段と強く収縮し、既に限界まで熱量を蓄え膨らんでいたアイオロスを締め付ける。サガの中に埋没させた局部が痙攣し、刹那、アイオロスは短く息を詰まらせ、溜まりに溜まった欲望を最深部に吐き出した。
続けて二度イかされ完全に四肢の力を失ったサガの身体が崩れ落ちそうになるのを支え、アイオロスはその耳元に唇を寄せた。
「サガ……」
息を弾ませながらアイオロスはサガの名を呼び、そして続けた。
「誕生日……おめでとう……愛してる……」
「え……?」
サガは整わぬ呼吸に肩を上下させながら、薄目を開けてちょうど正面の壁に掛けられていた時計を確認する。
日付は5月30日を、時刻は0時7分を指していた。
「ありが……とう……」
私も、愛している……途切れ途切れにそう伝え、サガはアイオロスの体を抱き返した。
東の月・東応みやこ様主催の『新妻誕2017』に掲載していただいた作品です。
2016/11/27『パラダイス銀河23』にて発行しましたロスサガ結婚本(完売)の設定で、結婚して初めてのサガの誕生日をアイオロスが全力で祝うというコンセプトの企画でした。
嫁の誕生日を全力で祝う旦那、嫁を喜ばせるために一生懸命な旦那をコンセプトに書き始めたはずが、よりいい思いをし喜んでいるのは旦那の方のような……という気がしないでもありません。
でもいいんだ、旦那の幸せはイコール嫁の幸せでもあるから!。
サガ、誕生日おめでとう!