「大きいな……確かにこれを一人で食べろというのは無茶振りだ」
結局二人で仲良くコーヒーを淹れ、リビングに戻ってケーキの箱を開けた直後にミロの口から飛び出してきた言葉がこれだった。
「だろ。というか、お前すごい他人事みたいに言ってるけど、そもそもこれを持って来てくれたのはお前だろうに、大体の見当ついてなかったのか?」
サガと一緒に受け取りにも行ったんだろう? と完全に他人事のような様子のミロにアイオリアが聞き返すと、
「うん、まぁ、それはそうなんだけど、そもそもサガは事前に何も言ってくれなかったから状況がまるで見えてなかったし、サガがこれ受け取ってる時にはよく見てなかったし、これ渡された時にも大きさとか全然気にしてなかったし……」
別のことで頭がいっぱいでケーキの大きさを気にしている余裕なんかなかった――とはさすがにミロも言わなかった。
ミロの返答を聞き、アイオリアはまた少し呆れ気味に目を丸めた後、「最初から最後まで、本当お前らしいな」と笑った。
「そう言えば何年か前にも同じようなことがあったな。あの時は教皇から……まぁ中身はサガだったわけだが、やっぱり誕生日にこれくらいの大きさのケーキをもらって……でもあの時は誰も一緒に食べてくれる人がいなかったから、オレ一人で丸二日かけて必死に食べたっけ。なんとか完食したけど、でも正直、しばらくの間甘いものは一切食べたくも見たくもなくなったな」
サガもその辺のこと少しは考えてくれてもいいのにな、と言ってアイオリアは更に楽しげに声を立てて笑った。
だが笑えないのはミロの方である。
それはミロがアイオリアを無下にして立ち去った後の出来事、つまり自分のせいでそんなことになったとも言えるからだ。
もちろんアイオリアは、もう一方の当事者であるミロに対して嫌味や皮肉のつもりでその話をしたわけではなかった。アイオリアからすればそれは既に懐かしい思い出となっているものであり、単純に事の成り行きで思い出したから何気なく話題にしたに過ぎず他意があったわけではない。アイオリア自身が「何年か前」と言ったように、何年前の出来事だったのか当の本人すら明確に覚えていないことが何よりの証拠である。
だがそれを昨日のことのようにはっきりと記憶し、胸の中にしこりとして残っているミロにとっては、笑い飛ばせることではない。
「…………ごめん」
少しして、絞り出すようにミロが謝罪の言葉を口にした。
それは6年越しに、ようやく叶った謝罪であった。
だが唐突にミロから謝罪されたアイオリアの方は、わけがわからず「えっ……?」と目を丸め、だが直後に自分が何気なくした思い出話が結果としてミロへの当て擦りになってしまったことに気づき、絶句した。
「あ、いや、オレはそんなつもりで言ったわけじゃなくて、単に思い出したから言っただけで、別にお前のことを責めてるとかそういうことじゃなくて、えっと、その、あの……ごめん!」
慌てふためいたようにアイオリアがミロに謝ると、今度はミロが目をまん丸くし、
「何でお前が謝るんだよ? お前は謝るようなこと何もしてないだろ?」
と、思わず聞き返してしまったのだった。
「だって、お前がそんな情けない顔して謝るからつい……。オレが考えもせず無神経なこと言ったのは事実だし……」
「お前は無神経でも何でもないし、それに情けない顔というのなら、今のお前の方が多分よっぽど情けない顔してるぞ」
言いながらミロはアイオリアの眉間のあたりを指差し、
「眉毛。ハの字になってる」
そう言ってニヤッと唇の片端を持ち上げて見せた。
「え? あ、そうかな? そんなに情けない顔してるのか? オレ。自分の顔は自分では見えないから……」
ミロの指摘に心持ち狼狽えてますますハの字に眉毛を下げるアイオリアを見て、ミロは堪えきれずに吹き出した。
「さっき散々言われた言葉、そっくり返すよ。そういうところが本当、お前らしいな」
自分達を取り巻いていた空気――と言うより、ミロが自身の過去の負い目から勝手に感じていた重苦しい空気を、アイオリアはいわゆる天然でブチ破ってくれたのである。
そんなアイオリアを、ミロは優しく目を細めて見つめてからすぐに表情を改め、
「今お前は『何年か前』と言ったが、それは6年前のことだ。6年前のお前の誕生日の夜のことは、ずっとオレの心の中に蟠りになって残ってた。忘れようとしても忘れられなくて、オレはあの日自分がお前に対して取ってしまった酷い態度を後悔していたんだ。だからずっとお前に謝りたい、謝らなきゃって思ってたのに、結局言い出すことが出来なくて……。これは言い訳にしかならないけど、お前が昔のことなんてなかったかのように普通に接してくれたから、無意識のうちにオレはお前に甘えてたんだろうな。気持ちと頭のどこかで、このままなぁなぁで済ませてしまえばいいんじゃないかって思ってたんだと思う。そうこうしているうちに、今日まで来てしまっていたんだ」
この時ミロの脳裏にふと、もしかしたらサガは無意識のうちに自分の中に芽生えてしまっていたのであろうそれらの感情までをも読み取っていたのではないか? だから敢えてこんなやり方で、自分の背を蹴り飛ばすような真似をしたのではないか? という考えが過った。
それはあくまでミロの推測に過ぎないが、そう考えれば全ての辻褄が合うのもまた事実である。
「アイオロスは反逆者なんかじゃなかったし、アイオリア、お前は反逆者の弟でもなかった。でももし、もし仮にアイオロスが本当に聖域に背いていたのだとしても、その弟たるお前には何の罪もないことだ。当たり前の話だが、アイオロスとお前は全く別個の人間、お前には一点の疚しいところもなく、オレにはお前を蔑む理由なんか一つもなかったんだから。でもあの時のオレにはそれがわからなかった……いや、アイオロスの汚名が雪がれるまでわかっていなかった。だからオレは長い間お前にあんな酷い態度を取ってしまっていた……愚かだったと自分でも思う、今更だがな」
「ミロ……」
「すまなかった、アイオリア」
改めてはっきりと謝罪の言葉を口にし、ミロは深々とアイオリアに頭を下げた。
アイオリアは頭を下げ続けるミロをしばし無言で見つめていたが、
「ミロ、ちょっとこっちに来て」
程なくして向かい側に座るミロに、理由も告げずただこっちに来いと言って手招きした。
訝しくは思ったものの、ミロは素直にその言葉に従ってアイオリアの隣に移動し、促されるまま彼の隣に腰を下ろした。
それでもアイオリアの顔がまともに見れず、ミロは俯き加減で意図的に彼から目線を外していたのだが、そんなミロの頭に静かにアイオリアの手が置かれた。
アイオリアはそのままミロの金髪を撫でると、これまで以上に優しい口調でミロに語りかけた。
「確かにアイオロス兄さんは冤罪を着せられていただけで、反逆者なんかじゃなかった、むしろ真実はその真逆だった。でもあの時のオレ達には、巧妙に仕組まれ仕立て上げられた虚構の裏に隠された真実を見抜く目などありはしなかった。正直オレだってずっと兄さんは聖域を、オレ達を裏切ったって思ってたんだからな」
ミロがようやく俯けた顔を上げてアイオリアと視線を合わせると、アイオリアはミロに向かって穏やかに微笑みながら頷き、言葉を継いだ。
「もちろん兄さんは正義の人だと、その兄さんが女神を害し、聖域に弓引く真似などするわけがないと信じたい気持ちはあったよ。でもオレはその兄さんを信じたい気持ちを、肉親だからこそ持ってしまう情だと思っていた。つまりオレですら兄さんを信じきれていなかったんだ。もしオレが兄さんを強く信じて行動していたら、兄さんの汚名はもっと早くに雪がれ、真実が明るみに出ていたかも知れなかったのに」
「アイオリア……」
「実の弟のオレですらそんな有様だったんだぞ。お前達が兄さんの無実を信じられるわけがないのは当然だ、そうだろう?」
兄を信じきれなかった自省と共にアイオリアはミロに問いかけたが、ミロは何も答えることができなかった。だがアイオリアも、ミロからの返答を期待していたわけではない。
「それにサガのことも少なからず影響していただろう。特にお前の場合はな」
次の瞬間、ミロが息を飲み、目を大きく見開いてアイオリアの顔を凝視した。
それはまさかそこに触れられるとは思ってもいなかったという表情で、同時に痛いところを突かれ大いに困惑していると物語っている表情でもあった。
しばし絶句した後、ミロは絞り出すように「どうして?」と短くアイオリアに問い返した。
「お前は昔から実の兄のようにサガのことを慕っていたからな。そのサガが――事実はともかくとして表向き忽然と姿を消したのは、兄さんが反逆者の汚名を着せられ聖域を追われたその直前だ。当時の状況からすれば、お前がサガが姿を消したのは兄さんが聖域を裏切ったせいだと考えたとしても無理もない。もし立場が逆だったら、恐らくオレもお前と同じように考えただろうと思う」
それは正にアイオリアの言う通りであった。
ミロはサガのことを本当に実の兄のように慕っていたし、アイオロスのことも同様に慕っていた。だが大好きだったその二人が、ほぼ同時に自分の前から居なくなった。しかもアイオロスは聖域を裏切り守り奉るべき女神に仇為すような形で、そしてサガは誰に何を告げることもなく突然に――。
真相が詳らかになった今だからこそ全てが一本の線となって繋がっていたことがわかるが、当時はアイオロスの反逆とサガの失踪のみを直結させることしかミロにはできなかった。
だが怒りを向けるべき相手であったアイオロスはシュラによって討伐され、混乱の最中で心身共に一番頼りにしていたサガもいない。とりわけサガを失った絶望と喪失感は大きく、そんな状況の中でミロはぶつけどころのない怒りの矛先を全てアイオロスの弟であるアイオリアに向けてしまったのだ。
つい今しがた言ったように、喩えアイオロスが本物の反逆者であったとしても、アイオリア自身が反逆したわけではもちろんない。彼には何の罪もなく、理不尽な怒りをぶつけられ蔑まれなければならない理由はないのだと、恐らく心のどこかで漠然とながらわかってはいたのだと思う。
ただそれを自覚し、割り切ることが当時まだ幼いミロにはできなかったのである。
「まったく、サガだけじゃなくお前も全部お見通しかよ。何かオレ、ほんっと情けないな……カッコ悪……」
13年前から今に至るまで、結局自分は一人空回りしっぱなしだったのかと、ミロは自嘲せずにはおれなかった。
「別にカッコ悪くなんかないさ。言ったばかりだろう、もし立場が逆だったらオレもきっとお前と同じように考え、同じような行動を取っていただろうと。たらればの話ですまないが、まず間違いなくそうなってたと思う。だからもう気にするな、とは言わないが、お前が未だ強く感じているであろう罪悪感だけは捨ててくれ。いつまでもそんなもの抱えられてたら、オレも困るからな」
そう言ってアイオリアは、今度はくしゃりと乱暴にミロの頭を掻き混ぜた。
小さく首を竦めたミロは、だがここでようやく強張ってばかりいた表情を緩め、
「いや、もし立場が逆だったとしてもお前はオレのようにはなってないよ。それは断言できる、だって……」
「ん?」
「だってお前、こっちが心配になるほど優しくて、その上底抜けのお人好しだからな。昔も今も全然変わってない」
瞳を細めて微苦笑を零したミロは、おもむろにアイオリアに身を寄せるなりその肩口に金色の頭を落とした。
予想だにしていなかったミロの行動に、アイオリアは面食らって身を硬直させた。ふわっとミロの髪が首筋と顎に触れ、頬が薄っすらと熱を帯びたことがわかる。
「ごめん、アイオリア……そしてありがとう」
ミロの謝罪と謝礼の言葉が、アイオリアの鼓膜と心を揺さぶる。
自分は何年前の出来事であったのかすらも碌に覚えていなかったというのに、ミロは6年もの間ずっと心の奥底に罪悪感を抱え、それに苛まれていたのだろう。
ミロは物心ついた頃からずっと一緒にいた、いわば幼馴染の中で最も仲が良かった相手である。その分よくケンカもしたけれど、すぐに仲直りもして、泣いて笑って切磋琢磨して来た一番の仲間で親友だった。
そう、13年前のあの夜までは――。
あの夜を境に自分達の関係は一変してしまったけれど、根っこの部分では何も変わっていなかったのかも知れない。いや、変わっていなかったのだと、アイオリアはこの瞬間に確信した。
幼く未熟だったが故にミロはアイオリアに対し冷たく心ない態度を取り続け、そしてアイオリアは幼く未熟だったが故に逆風に抗うことをせず、ミロや周囲の理不尽な仕打ちを甘んじて受け入れてきた――と言うと聞こえはいいが、全てを早々に諦め分かり合う努力を一切してこなかった。そんな自覚はなかったけれど、あの時の自分は完全に自暴自棄になっていたのだと思う。
ミロはこの短時間に自分に繰り返し謝罪をしているが、ミロばかりが悪いわけではない。あの時の自分にもう少しだけ理不尽な状況下から脱しようという強い意志があれば、またきっと違った形で、もっと早くに関係修復の道が開けていたのかも知れないのだからとアイオリアは思った。
そうは言ってもこれもたらればの話にしかならないし、口に出して言おうものならまたミロに『お人好し』と呆れられるだけになりそうでとても言えなかったのだが。
そしてこの時アイオリアは、不意に自分の心の中にもう一つ新たに芽生えた感情に気がついた。
いつ頃からはわからないが、これはきっと遠い昔から自分の裡にあったはずの、だが幼すぎてわからなかった感情――それが種として心の奥深くに埋まっていたものが、今この瞬間に芽吹いたのだと、自分の裡に生まれた新たな感情をアイオリアは何故か戸惑うことなくすんなりと受け入れていた。
アイオリアは突然、だがそっと優しく柔らかくふわりと包み込むようにミロを抱きしめた。
アイオリアの行動が意外だったのか、ミロは抱きしめられた刹那、驚いたように極々僅かに身を強張らせたが、すぐに力を抜いて素直にアイオリアの両腕の中に全身を委ねた。
長年の胸の閊えが取れて気持ちが軽くなったお陰か、腕の中にいるミロの小宇宙が急速に穏やかさを取り戻していることにアイオリアは気づいた。
よかった……そう心の中でアイオリアは呟き、ミロを抱く腕に少しだけ力を込めた。応じるようにミロの両手が緩く自分の腰に巻きつけられたことがわかる。
抱き合ったまま無言で幾許かの時を流した後、アイオリアがミロに問いかけた。
「なぁ、ミロ」
「うん?」
腕の中のミロが、ゆっくりと顔を上げる。
「そういえばサガは、まぁ今年はともかくとしても、何で6年前のあの年の誕生日だけオレに誕生祝いのケーキを届けてくれたんだろう?」
当時教皇に扮していたサガから誕生日にケーキを贈られたのは、そういえばあの年一回だけだったことをアイオリアは今更ながらに思い出し、ミロにそれを尋ねた。
尤もあの時のサガがミロに本当の理由など語っているはずもないし、知らないという答えが返ってくるだろうと漠然と予想してもいたのだが、
「あの時教皇――サガからは『アイオリアに届けるように』としか指示されなかったから、これから話すことはあくまでもオレの推測だけど……」
その予想に反し、ミロは自分の推測であることを前置きした上でアイオリアのその問いに答えた。
「多分あの年のお前の誕生日だけは、サガの善の人格が表に出ていたんじゃないかと思う。もう一つの、悪の人格のサガにとってお前は存在そのものが脅威だったはずだし、あわよくばお前のことを消そうと目論んですらいたと思うけど、善の人格のサガがそれを必死に阻み続け、見えないところでずっとお前を守っていたんじゃないかと思ってる」
「サガが、見えないところでオレを守ってくれていた?」
「ああ。オレは教皇の正体がサガだって最後まで知らなかったし気付きもしなかったけど、でも側近としてずっと傍にはいたから何となくわかる部分はあるんだ。今にして思えばだけど、13年前のあの夜からサガの中の善悪の人格の力関係が決定的に逆転したんだと思う。悪の人格の力が飛躍的に増して、善の人格は淘汰されないまでも自分の力で悪の人格を抑え込むことがままならなくなった。結果、悪の人格の方が主人格として表に出ることが多くなっていたんじゃないかと思う。お前のことを邪魔者としか見ていなかった悪の人格のサガが、お前の誕生日なんか気にするはずもない。だけど6年前のお前の誕生日だけは、善の人格のサガが表に出ていたんじゃないかな? だからきっと、その時のサガにできる精一杯の誕生祝いをお前にしたかったんじゃないかって今はそう思ってる」
「その時のサガにできた精一杯が、あの大きなケーキか?」
思わずプッと吹き出したところで、アイオリアはふと考えた。
今度はアイオリアの推測にすぎないが、ミロの推測が全て正しいものと仮定して、あの時のサガにはもしかしたらそれを機にヒビが入っていた自分とミロの仲を修復しよう、そのきっかけになればという思惑があったのではなかろうか? だからこそあの時も敢えてミロを遣いに出したのではないか? そして一人で食べきれないような大きなケーキをくれたのも、何も考えていなかったからではなくそのような目論見があったからなのではなかろうか? と。
そんな期待を込めてサガがミロを送り出していたとして、実際にそれはものの見事に外れてしまったわけだが、もしも自分のこの推測が全て当たっていたのだとすると――
「もしかして今日サガがお前をここに来させた本当の理由って……つまり今年の本当のプレゼントはこのケーキじゃなく……?」
困惑気味にアイオリアが問い返すとミロは、
「多分、当たり」
明快にそう答え、くすっと小さく笑った。
「前振りなしに呼び出されて街に連れ出されてケーキ渡されてお前に届けろって言われた時に、オレもサガの真意は何となくわかってた。ただその時は正直、余計なお世話いい迷惑だとしか思わなかったけど……」
ミロはアイオリアの両肩に自分の両手を置き、少しだけ彼から身体を離した。
「今はサガに感謝してる。やり方が超強引だったし、何もかもを見透かされてたのはちょっと癪に障るけどね」
でもサガが居なければミロは絶対今日ここには来ていなかったし、下手をしたら一生、自分の過去の過ちと向き合う機会を得られなかったかも知れない。そしてアイオリアとはこの先も心に蟠りを残したまま、表面だけの良好な関係を続けていかなければならなかったかも知れない。
結果としてそれら全てが一気に解消されたのだから、そのきっかけを作ってくれたサガに感謝をしないわけにはいかないだろう。
ミロはこっそり自分に気合いを入れ直してから改めてアイオリアに向き合うと、真正面からしっかりとアイオリアの緑の瞳を捉え、晴れやかな表情で言った。
「改めて……誕生日おめでとう、アイオリア」
子供の頃の面影がはっきりと滲む屈託のない笑顔を向けるミロに、アイオリアは短く、だが喜色満面の笑顔で答えた。
「ありがとう、ミロ」