◆14歳に戻りたい?
「オレ、14歳のままで生き返らせてもらった方がよかったかなぁ?」

「は?」

唐突なアイオロスの言葉に驚き、サガはコーヒーカップを持つ手を不自然な位置で止めた。
向かいに座るアイオロスはテーブルの上にあるコーヒーの湯気を顎に当てつつ、頬杖をついてどこか浮かない顔でサガを見つめている。

アイオロスは現世に再生を受けた時、享年当時の14歳ではなくきっちり13年分齢を重ねた27歳で生き返っている。
14歳で生き返る事も可能ではあったようだが、アイオロス自身が望んで現在の年齢で新たな生
を得たはずなのである。
それが今になって何故こんなことを言い出したのか、その理由がわからずサガは首を傾げた。

「何を急に言い出すかと思えば……どうしてそんな事を?」

口に運びかけたコーヒーカップをソーサーに戻し、サガは単刀直入にアイオロスに理由を尋ねた。
単に『教皇になりたくないから』という理由かとも思ったのだが――というよりそれより他に思い当たる節がないのだが、アイオロスは14歳当時既に次期教皇に指名されている。
聖域の状況自体当時と大きく変わっていることは事実だが、とはいえ年齢が教皇の座に就くことを回避する有効な手立てにはなり得ないし、それくらいのことはアイオロスにだってわかっているはずである。
となるとやはりそれ相応の理由が他にあるということなのだろうが、サガには皆目見当がつかなかった。

「うん……」

だがアイオロスはサガの問いにすぐには答えず、曖昧な生返事をするだけであった。
ますますわけがわからなくなったサガだが、

「確かにお前は13年分の命を無駄に捨てたようなものだからな。それを惜しむ気持ちもわからなくはないが……」

これも理由としては今ひとつ弱い気がしないでもなかったが、教皇就任の件以外となるとあとは他に思い当たることがなかった。

「は? いや、オレは別にそんなことこれっぽっちも思っちゃいないけど? だって考えてもみろよ、普通の人間からすれば13年ってのはそれなりに長い年月だろうが、その気になれば200年以上余裕で生きられるオレ達黄金聖闘士にとってはほんの僅かな時間だ。それこそちょっと寝坊しちまったかなって程度の時間だからな」

「では何故?」

サガが短く問い直した。

「そんな大した事が理由と言うわけではないんだが……あ、そうは言ってもオレにとってはまぁそれなりに大した理由になるかな?」

「だから、その理由は何なんだと聞いている!」

あやふやな態度でなかなか答えを返してくれないアイオロスに焦れて、サガが苛立ち混じりの声を張り上げた。
これ以上グズグズしてるとサガがマジギレしかねないと、アイオロスは慌てて話の本筋に入った。

「いやその、星矢……がさ……」

「星矢? 星矢がどうかしたのか?」

また突然に出て来た星矢の名に、サガが不思議そうに目を瞠った。
二日程前から星矢は女神・沙織のお供で聖域に来ていたのだが、つい先刻、用事の済んだ沙織と一緒に日本に帰っていったばかりである。
星矢は帰国の直前までここ双児宮にいたのだが、その星矢とアイオロスが突然妙な事を言い出したその理由がどう繋がるというのか、やっぱりサガにはわからなかった。

「あいつさ、お前に会う度いっつもお前に飛びついて来るじゃん? まるで子犬みたいに」

「……ああ、そう言えば」

アイオロスに言われ、初めてそのことに気付いたようにサガが小さく頷いた。
これまで気にした事もなかったのだが、そう言われてみれば星矢は自分に会うといつも軽やかな動作で飛びついて来ていて、今回の訪問時ももちろん同様であった。

「でさ、お前もいつも飛びついて来た星矢をそのまま抱っこしてあげるじゃん?」

「抱っこと言うか、ただ受け止めているだけのつもりだが……」

「いや、あれは抱っこだろ、間違いなく」

「星矢はまだ子供で、私とは体格差があるからな。そのせいでそんな風に見えるような形になってしまっているだけだ」

正直、サガにとってはどちらでも同じようなことなのでああだこうだと言い合うつもりはないのだが、どうやらアイオロスにとってはちょっと事情が異なるらしい。
またこの件に星矢の存在が関係していることはどうやら間違いないようなので、ここで話を切るわけにもいかない。
サガは当たり障り無くそう応じ、アイオロスの次の言葉を待った。

「でもさ、お前星矢の事すごく可愛がってるだろ」

「それは、まぁ、あれだけ慕ってくれればな。だが星矢のその行動とお前がわけのわからない事を言い出した理由がどう関係するんだ?」

自分が星矢を可愛がっていることとアイオロスが14歳で生き返れば良かったなどと言い出したその関連性が依然として見えず、サガは首を傾げる一方であった。

「いいなって思ってさ……」

「いいな、って、何がだ?」

「だからぁ……星矢が羨ましいなって思って」

「羨ましい? 何故?」

ここまで言ってもまだわからないのかと恋人の鈍さにアイオロスは軽く呆れたが、サガがこの手のことに鈍いのは今に始まった事ではない。昔からである。
そういうところは幾つになっても変らんのだなと思いつつ、アイオロスは小さな溜息をついた後に再び口を開いた。

「星矢はいつでもどこでもお前に抱っこしてもらえていいな、羨ましいなって言ってるんだ」

「はぁ!?」

予想だにしていなかったアイオロスの返答に、サガは彼らしからぬ間の抜けた声を上げた。
少し考えた後、サガはアイオロスに怪訝そうに尋ねた。

「アイオロス、まさかと思うがお前、星矢にヤキモチを妬いているのか?」

「ヤキモチっていうのとはちょっと違う。羨んでいるだけだ」

「どちらでも大して変らんだろう。あのなアイオロス、相手は子供だぞ?」

「わかってるよ。だからオレも14歳で生き返らせてもらえばよかったかなって言ってるんじゃないか」

ここまで来てようやくサガにも、アイオロスの唐突な発言の根底にあるものがぼんやりと見えて来た。
それと同時にサガは、アイオロスにうっかり発言の真意を問うてしまった自分の軽率な行動を後悔し始めていた。
どうやらこれは全力で無視すべき事柄だったようである。
話を先に進めたところで恐らく巨大な脱力感に襲われるのがオチだろうが、だからと言ってここで中途半端に話を終わらせる事はサガの性格的に出来なかった。

「嫌な予感しかしないが、念の為に聞いておくぞ、アイオロス。仮にお前が14歳で生き返ったとして、一体お前にどんなメリットがあると言うのだ?」

「ん? サガに堂々と抱っこしてもらえるっていうメリットかな」

サガの嫌な予感はものの見事に的中したようである。
恥ずかしげもなくいけしゃあしゃあと笑顔で言ってのけたアイオロスに、サガは軽い目眩を覚えた。

「だって今のオレがお前に飛びついても、お前はあんな風にオレを抱っこしてはくれんだろ? まぁそれより以前に体格的に無理だが」

アイオロスはサガより10cm程背が高く、身体も一回り逞しい。
よって星矢のように『抱っこ』してもらうことは不可能であり、そのことはアイオロスもよくわかっていた。

「あのなアイオロス、こんなことを言うのも馬鹿馬鹿しいが、例えお前が14歳当時のまま生き返ったからと言って、私がお前を星矢と同じように『抱っこ』してやるという保証がどこにあるというんだ?」

「え? だってあいつ13歳だろ。1歳程度の年齢差なんてないに等しいわけだから、必然的にお前の接し方だって同じような感じになるんじゃないかと思って」

最初はタチの悪い冗談かと思ったサガだが、どうやらアイオロスは本気で言っているらしい。
しかもアイオロスは実年齢的な部分で大差がなければ、自分も星矢と同じようにサガに扱ってもらえると信じて疑っていないようであるが、その根本からして間違っていることに全く気付いていないようである。
軽い目眩に続き、今度は軽い頭痛がサガを襲った。

「外身はともかく、どうやら頭の中身は14歳のまま成長が止まっているようだな、お前は」

これみよがしに大きな溜息をついてみせてからサガは、

「確かに年齢的には殆ど同じと言えるが、お前、14歳当時の自分と星矢では決定的に違う部分が一つあることを忘れてるだろう?」

半ば問いかけるように、アイオロスに言った。

「決定的に違う部分って、サガの恋人かそうじゃないかってこと……かな?」

「違う!!」

思わず手の平でバンッ! とテーブルを叩いた後、サガは更に痛みと重みの増した頭を押さえつつ、

「お前は14歳当時の自分の体躯を思い出してみろ!」

叱責混じりの口調でピシャリと言って、今度は疲れ果てたように吐息した。

「……あ!」

少し考えた後、アイオロスが小さな声を上げる。
やっと思い出したか、とサガは心の中で呟き、

「確かに今と比べれば小柄ではあったろうが、それでも14歳当時のお前は既に今の私とほぼ変らぬ体躯の持ち主だったと記憶しているが?」

口に出しては厭味全開でそう言うと、アイオロスは非常にバツが悪そうに小さく頷いた。

「わかったか? 14歳のお前と星矢では、例え年齢的な差がなかったとしても元々の体格差がありすぎるんだ。つまりお前が14歳で生き返ったところで実のところ今と大差あるわけでもなく、どちらにしても私がお前を星矢と同じように『抱っこ』するのは物理的に無理なんだよ」

サガから見れば星矢は――あの年代の日本人男子ではほぼ平均レベルだそうだが――小柄で、飛びつかれてそのまま抱き上げることもまったく問題なく出来るが、14歳当時のアイオロスの場合、例えて言うなら今現在のカノンに飛びつかれてそのまま抱き上げろと言っているようなものなのである。
それはいくら何でも無茶ぶりとしか言いようがないであろう。

「あいつ、身長どれくらいだっけ?」

「正確には知らんが、164〜5cmくらいだろうな」

「164〜5かぁ……オレ、確か10歳になる前にはもうそれくらい身長あったような気がする。さすがにそこまで若返るのはなぁ……サガと釣り合い取れなくなるしなぁ……」

真剣な様子で的外れなことを呟くアイオロスに、サガの脱力感が強くなる。
根本的な部分で話が食い違っていることが、アイオロスは全くわかっていないらしい。

「ついでにもう一つ言っておくが、私は15歳未満の子供相手に恋愛をするつもりはないからな。釣り合いが取れる取れない以前の問題だ」

年下が恋愛対象にならないわけでは決してないが、やはり程度というものはある。
さすがに自分の半分にも満たない年齢の少年を恋愛対象として見ることは、サガには出来なかった。

「えっ!? ちょっと待ってくれ、サガ。それってオレがもし14歳で生き返ってたら、オレまで恋愛対象外にされてたってことか!?」

「そういう意味以外に聞こえてたら、私の言い方が悪いのだろうな」

「14歳だろうが27歳だろうが、オレはオレで同じ人間なんだけど、それでも?」

「それでも」

冷然とサガは断言した。
例え同じ『アイオロス』であっても、倍も年齢が違えばほぼ別人と言えるだろう。
ただ先刻口に出して言ったように現在のアイオロスもどうやら頭の中身に14歳のままの部分が残ってはいるようだが、その程度ならサガがそう言う部分もあると割り切れば済む話であった。
だが見た目も中身も完全に14歳となると、さすがにわけが違って来るのである。

「そっか……それじゃ14歳で生き返っても全く意味ないってことか?」

「そういうことだ」

14歳で生き返っても体格の問題で星矢のようには扱ってもらえない上、恋人関係まで解消されるとあっては、はっきり言って自分にとってメリットどころかデメリットしかない。
そのことをようやく理解したアイオロスは、27歳で生き返らせておいてもらってよかった……と改めて思うと同時に何とも言葉にし難い切なさと落胆を覚え、思わずガクリと肩を落とした。

「……そこまで落胆することか?」

目に見えてがっかりしているアイオロスに、何をそこまで落胆する必要があるのかとにサガが疑問符を投げかけた。

「うん、まぁ、その……どうやっても叶わぬ願いだったんだってことはわかったけど、それがわかったらわかったでがっかり感がハンパないって言うか何て言うか……そりゃ落胆もするよ」

アイオロスはしょんぼりしながら、大きな溜息をついた。

「そんなに星矢と同じようにして欲しいのか?」

蓋を開けてみたら馬鹿馬鹿しいくらい子供じみた理由でサガはかなり呆れはしたものの、アイオロスがあまりにもがっかりしていてさすがに少し可哀想にも思え、やや口調を和らげてそう聞いた。

「同じようにして欲しいっていうか、まぁ手っ取り早く言えばそうなんだろうけど、それよりも絶対にダメだと思うと余計にあいつが羨ましく思えてさ。そっちの理由の方が大きいかな」

ははは……とアイオロスが力なく笑う。

「子供を本気で羨むなんて、大人げないにも程があるぞ」

溜息をつきつつ小さく頭を左右に振ったサガは、やや疲れたようにそう言うとおもむろに席を立ち、正面に座るアイオロスの横にゆっくりと移動した。

「サガ?」

いきなり隣に立ったサガをアイオロスが不思議そうに見上げると、サガは彼らしからぬ悪戯っぽい微笑を唇の端に浮かべ、

「だが、そこまで言うのなら仕方がない」

「ほえっ!?!?」

サガがそう言ったのとアイオロスが間抜けな声を上げたのとアイオロスの視界が大きく動いたのは、ほぼ同時だった。
その次の瞬間、見上げていたはずのサガの顔が自分の目の前至近距離にあり、アイオロスはわけがわからずきょとんと目を丸めて間近にあるサガの顔を凝視した。
サガは悪戯っ子のような笑みを更に深め、

「サイズ的に星矢と同じようにしてやることは無理だが、こういう形でなら今のお前相手にでも出来るぞ。これでどうだ?」

ややからかい混じりの口調でそう問いかけた。
僅かの間茫然自失状態になっていたアイオロスは、サガのその言葉で我に返り、そしてようやく自分の現状を理解した。

この時アイオロスはサガに、念願の『抱っこ』をしてもらっていたのである――が、その『抱っこ』はいわゆる『お姫様抱っこ』であった。

サガ自身が言ったように、サイズ的な問題でアイオロスを星矢と同じ形で『抱っこ』することは出来ない。
だがサガとても黄金聖闘士。自分より身体が大きい相手であっても、こんな風に形を変えさえすれば抱き上げること自体は容易なのである。

自分がどんな格好をさせられているか自覚したアイオロスは、今度は恥ずかしさに顔を赤くして、

「ちょっ……と、おい、サガ、いくら何でもこれは……」

「何だ? 文句でもあるのか?」

「あ、いや、文句があるって言うわけじゃないんだが、さすがにちょっとこの格好は……」

一応言葉を選びつつ、これはちょっと違うとサガに訴えた。

「お前のサイズでは星矢と同じようにしてやるのは無理だと今も言っただろう。こうする以外にないのだから、仕方あるまい」

「それは、まぁ、そうなんだけど」

確かにそれはサガの言う通りだし、これも抱っこと言えば抱っこであることに間違いはない。
だがアイオロスの望んでいた形とはあまりに違いすぎて、嬉しさよりも恥ずかしさの方が先に立ってしまうのもまた仕方のないことであった。

「私はお前の望みを叶えてやってるんだぞ」

「だからそれもわかってるけど……」

「それならば不満そうな顔をするな」

「だから不満になんて思ってないってば! ただ……」

「ただ?」

サガの鸚鵡返しに、アイオロスは困ったように眉間を寄せる。
別に嫌な気がしているわけでは決してないし、不満に思っているというのも違うし、むしろサガの気持ちは本当に嬉しいし、恥ずかしい思いはあれど反面満更でもない気持ちもあり、アイオロスの心情は非常に複雑であった。
形はどうあれサガと密着出来ていることはアイオロスにとってこの上なく幸せなことなのだが、いつもと違ってそわそわするようなむず痒いような堪らない居たたまれなさがあって、とにかく落ち着かないのである。

「オレ、こういうの慣れてないからさ。それもあって収まりが悪く感じるっていうか、落ち着かないんだと思う」

そこまで言ってアイオロスは、落ち着かないのももちろんだが、不慣れから来る居心地の悪さもあるのだと言うことに気付いた。

「こういうのも悪くないっていうか、新鮮な気分は味わえたってのは良かったと思うけどな。でも……」

そこまで言うとアイオロスは、大きな身体を軽やかに翻してサガの腕の中から飛び降りた。

「うわっ!」

着地するなり即座に反転すると、アイオロスは目にも止まらぬ素早さでサガの身体を軽々と抱き上げた。
もちろん、言わずもがなのお姫様抱っこである。
この間、僅か1秒。
そのたった1秒でアイオロスとサガの体勢は綺麗に逆転したのである。
あまりの早業に、今度はサガがきょとんと目を丸める番であった

「うん、やっぱりこっちの方がしっくり来るな」

そう言いながらアイオロスは、抱き上げたサガに向かってにっこりと笑って見せた。
サガは丸めた目を2〜3度瞬かせた後、我に返ってムッと顔をしかめ、

「お前が星矢を引き合いに出して大人げないわがままを言うから、そんなに言うならと思ってその願いを叶えてやったのに、これでは何の意味もないではないか!」

望んでもいないのにこんな格好をさせられたことももちろんだが、この状況に至る間のアイオロスの言動がどれもこれも唐突すぎてサガには理解不能であった。
星矢と同じように抱き上げて欲しいと言うから抱き上げてやれば、この体勢は落ち着かないと言って自分の意志も問わず勝手に体勢を入れ替える。
とことん自分勝手なアイオロスにサガは抗議の声を上げたが、

「もちろんそれはよくわかってるし、サガの気持ちには感謝してるよ、心からね。でも実際にサガに『抱っこ』してもらったら、やっぱりこっちの方がいいやって実感出来たんだよな。それに考えてみればこうしてサガを『抱っこ』できるのってオレだけの特権で、しかもそれは唯一無二のものなんだよな。そんなお宝特権を既に持ってるオレが星矢を羨む必要なんて、そもそもなかったんだってことにたった今気付いたってわけ。だから14歳で生き返りたいって言ったのはナシ。今のままでいいや」

アイオロスはサガの抗議など意にも介さず、涼しい顔で全く悪びれた様子も見せずに言った。
勝手に特権にするな! とは思ったサガだったが、アイオロスが満面の笑顔であまりに無邪気に言い放つものだから、何故か圧倒されてしまいそれを言葉にすることが出来なかった。

「……僅か数分でよくあっさりと前言を翻せるものだ。まったく、お前の変わり身の早さには感心するよ」

数秒後、気を取り直したサガは今度はストレートに厭味をぶつけたが、これもアイオロスにはまるで堪えなかったようである。
何故なら腕に抱き上げた自分に向けているアイオロスの笑顔が、この上なく幸せそうだったからだ。
この状態のアイオロスにこれ以上厭味や文句を言ったところで、右から左へキレイに聞き流されるのがオチである。
つまり言うだけ無駄と、サガは諦めの溜息をついた。

最も、不満を露にしつつも簡単に抜け出せる現状から抜け出さず、アイオロスのされるがままになっているあたり、サガも心の底からうんざりしている、嫌がっているというわけでは全くないようだが。

「サガ」

「うん?」

「愛してるぜ」

またも何の脈略もなく赤面物の台詞をストレートど真ん中に投げ込まれ、虚をつかれて再び絶句してしまったサガに、アイオロスはしてやったりとばかりに笑みを深め、次の瞬間疾風の如き素速さでその唇を掠めとったのだった。


post script
無駄にイチャイチャしているだけロスサガが書きたい! という理由で書き始めたせいか、何の変哲もないバカップルの話になってしまいました、すみません。
私が「ホモでもお姫様抱っこは必須! むしろホモだからこそお姫様抱っこは大事!」という信念の持ち主なので頻繁にお姫様抱っこは出てきますが、これまでアイオロスをお姫様抱っこさせたことはさすがになかった気がします。
これはこれで悪くはないけど、アイオロス同様、私的にもやっぱりサガがお姫様抱っこされる方がしっくり来ますね(笑)。

余談ですが私はアイオロスの身長を大体197〜8cmくらいで想定して書いています。
享年当時の14歳で187cmもあれば190cm突破するのは間違いないんで、計算してこれくらいは軽くいくだろうということで。
200cm超えでもおかしくないと思ってますが、まぁこれくらいが妥当なところかなと思ってます。
因みに15歳当時のサガを書く時は、177〜8cmくらいで想定してます。
常に身長差10cmキープで(笑)。

Topに戻る>>