「結婚して初めてのサガの誕生祝いと結婚半年記念を兼ねてバカンスに行こう! サガの誕生日を挟んで一週間くらい。夫婦二人で!」
アイオロスが突然そんなことを言い出したのは、5月に入ってすぐのことであった。
「は?」
「だからバカンス! 夫婦でバカンスに行くんだって!」
「バカンスって、どこに?」
サガが聞き返すとアイオロスはなぜか得意げな顔になって、
「聖域は山間部だし、新婚旅行は主にビーチリゾートを中心に回った。ということで、今回は都会に行くことにした大都会に!」
「は!?」
夫の突然の旅行に行くぞ宣言にサガは呆気に取られる一方だったが、そんなサガの様子などお構いなしにアイオロスはどんどんと話を前に進めていく。
「オレ達二人の休暇申請は受理されてるし、ホテルの手配も済んでいる。あとは出発までにじっくり観光予定を立てよう。楽しみだな」
楽しみだな、と微笑まれても、今の今知らされたばかりしかも自分の意見は全く聞かれておらず、全部決めた後の事後承諾——という状況では、サガとしても唖然呆然としたまま絶句することしか出来ない。
そんなサガとは対照的に、アイオロスは夏休みを前にした子供のように一人楽しげに浮かれているのだった。