「12月14日の夜は空いているか?」
サガがアイオロスに唐突にその日の予定を尋ねたのは、ちょうど二週間前の11月30日、アイオロスの誕生日の夜のことであった。
「12月14日? ああ、うん、特に予定は入ってないけど」
何で? とアイオロスが尋ね返すとサガは、
「星を見に行かないか?」
と唐突に誘いを向けた。
「星?」
「ああ」
短く答えて頷いてから、サガはすぐに言葉を継いだ。
「双子座流星群を見に……。今年は、いや、今年も12月14日なんだそうだ」
それを聞いたアイオロスは小さく息を飲み、少し驚いたように目を瞠ってサガの顔を見た。
アイオロスのその表情を見たサガは、やや決まりが悪そうに微苦笑してから、
「約束していただろう? 12月14日に双子座流星群を2人で見に行こうと……。最もそれはもう13年も前の、私が反故にしてしまった約束だがな」
そう言って苦笑を自嘲に変えた。
「13年も経って今更だとは承知しているが……」
あの時の約束を果たせるものなら果たしたい――これは口には出さなかったが、新たな人生を与えられて以来サガがずっと願い続けていたことであった。
アイオロスは黙ったままじっとサガの顔を見ていたが、やがてフッと表情を和らげると、
「今更なんて思うわけないだろう。オレにとってはあの日の約束は、つい昨日のことも同然なんだからな」
つまり答えはOKだ、と言外に言いながら、アイオロスは手を伸ばして優しくサガの頭を撫でた。
「あの約束、覚えていてくれて嬉しいよ、サガ」
「アイオロス……」
少し不安げに瞳を揺らめかせているサガにしっかりと頷いて見せてから、アイオロスは改めてサガに問いかけた。
「ところで、どこに双子座流星群を見に行くんだ?」
「スターヒルに」
そう即答したサガに、アイオロスは目を丸めた。
立場は逆になっているが、やりとりの内容は13年前とほぼ同じである。2人は改めて顔を見合わせると同時に小さく吹き出し、
「あそこは教皇しか立ち入れぬ場所……じゃなかったのか?」
アイオロスが冗談めかして問うと、サガもアイオロスに調子を合わせて答えた。
「近い将来、お前が教皇になることはもう決まっているのだから大丈夫だ。少しくらいのフライングは許されるだろうし、そもそもこの13年間で私が散々足を踏み込んでいるからな。これももう今更だ、気にする必要はない」
「13年前には眉を顰めてオレに説教してた人間と同一人物とはとても思えんな。お前のその発言の変化で、今になって改めて13年の時の流れを実感した気分だよ」
そう言ってアイオロスは、嬉しそうにサガの身体を抱き寄せた。サガも大人しくアイオロスの腕に抱かれ、その胸に顔を埋める。
アイオロスはサガを抱く腕に少しだけ力を込め、そして耳元に唇を寄せて囁きかけた。
「今度こそ一緒に見られるな、双子座流星群」
「うん……」
あの時と違ってサガの心に過る不安はない。
今度こそアイオロスとの約束を違えることはないだろう。
そしてこの日からサガも、心密かに12月14日を指折り数えて待つようになった。
2016/12/10:双子座ワンドロ&ワンライのお題「双子座流星群」で書きました。
最初は現在でもアイオロスが誘いをかけるという展開を考えておりましたが、土壇場でサガに変更いたしました。
過去の罪に苦悩するサガも萌えるのですが、その罪を自覚しつつ吹っ切ってある意味開き直って前を向いて歩いていく……そんなサガもいいのではないかと思います。