「せっかくのクリスマス・イヴだってのになぁ……」

一区切りついたところで仕事の手を止めたアイオロスは、脱力気味に執務机に頬杖をついて、溜息を漏らした。

「何をぼやいているんだ?」

くすっと小さく笑いながら、サガがアイオロスの前にコーヒーを置いた。

「いや、クリスマスってこんなに忙しかったかなぁ?って思ってさ」

サガに礼を言って、アイオロスがコーヒーを一口啜る。コーヒーの苦味が、寝不足気味の頭をほんの少しだけしゃっきりとさせた。

「クリスマスの礼拝は聖域にとって大事な行事だからな、致し方あるまい。毎年こんなものさ」

13年間教皇を務めてきて、クリスマスの礼拝の大事さ、そしてそれに伴う忙しさを身をもって知っているサガは、事も無げにそう応じて小さく肩を竦めた。

ギリシア正教徒の多い聖域では、キリスト生誕の日であるクリスマスは、大切な祝日である。特に前日のイヴ、そして当日25日に執り行われる礼拝は大事な行事で、教皇シオンとその補佐官兼次期教皇のアイオロス、そして同じく補佐官のサガは、その為の準備と日常業務とに追われて大わらわであった。12月の声を聞いた頃から残業の連続で、ここ3日間ほどは自宮にも帰れずに、教皇宮に泊まり込んで仕事をしている始末である。

今日、イヴの礼拝は何とか無事に終わったものの、何と言っても本番は明日。他の者は礼拝が終わると各々引き上げてプライベートな時間を楽しんでいるが、サガとアイオロスにそんな時間があるわけもなく、礼拝が終わると同時に休む間もなく明日の準備にかかり、なおかつ滞らせるわけにはいかない日常業務も平行して行わなければならなかった。やっと一息ついたと思ったら、もうそろそろイヴも終わろうと言う、この時間である。しかも仕事が全部片付いたわけでもなく、今日も泊まり込みになることは必至であった。正にイヴの夜を楽しむ余裕など、これっぽっちもない有様だったのだ。

「13年前にもちょっとは手伝ってたんだけど……ここまで忙しくなかったよーな……」

言いながら、アイオロスが当時の記憶を手繰り寄せる。確かに忙しかったには忙しかったが、ちゃんと毎日家には帰っていたし、子供達とクリスマスパーティをする余裕もあった。

「13年前までとはわけが違うよ。私達の立場も、仕事も、それに伴って与えられた権限もね。比べても意味はない」

確かに、13年前の時点で既にサガもアイオロスも次期教皇候補ではあったが、与えられている権限と仕事量は今とは比較にならない。まだ2人とも少年であったし、面倒を見なきゃいけない後輩達はたくさんいたしで、シオンもそこそこは仕事量をセーブしていたのである。だが今となってはもうその必要もなく、増して片方のサガはこれまでずっと教皇としてクリスマスの礼拝を取り仕切って来ていたのだから、シオンとしても遠慮する道理もないのである。なので容赦なく仕事を回した揚げ句に、本来自分がするべき仕事までをもちゃっかり2人に押し付けていた。よって当のシオンは、とっくの昔に私室に引き上げている。

「はぁ〜、サガと2人っきりでいられるのは嬉しいんだけど、こう、仕事仕事じゃなぁ……」

アイオロスが正真正銘愚痴りたいのは、正しくこの一点であった。12月に入ってから、残業だの泊まり込みだので殆どの時間をサガと一緒にいるのだが、それら全てが仕事なので、プライベートでサガと過ごす時間が激減していたのである。誰に気兼ねすることなく一緒にいられるのはいいのだが、仕事では嬉しさも半減しようと言うもの。せめてクリスマスくらいは……と思っていたのに、結局これではついぞ愚痴の1つや2つは言いたくなってしまう。

「ボヤくな。これから毎年こうなんだ。覚悟を決めるいい機会になったろう」

「うげぇ〜……」

サガに言われて、アイオロスは思わず呻いた。アイオロスだって、人並みに恋人とラブラブなクリスマスと言うものを過ごしてみたいのだが、それは無理だと当の恋人自らに宣言されたようなものであった。

「シオン様なんか、とっとと私室に引っ込んじゃったじゃないか」

「シオン様は教皇だぞ、当たり前だろう。細々とした雑事を、補佐役の私達がやるのは当然のことなのだぞ」

サガは少し眉を顰めて、アイオロスを窘めた。生き返って初めてのクリスマスがこれでは、文句を言いたくなる気持ちもわからないでもないが、職務上どうしようもないとしかサガは言えないのである。

「それが嫌なら、お前が早く教皇になることだな。そうすれば雑事は補佐官に任せて、ゆっくりと過ごせるようになるぞ」

「じゃあお前、私と結婚してくれるか?。そうしたらすぐにでも教皇になれるんだけど……」

8割方本気でアイオロスは言って、チラリとサガの様子を伺った。実のところアイオロスにとって、教皇職を継ぐ、継がないなどということはどうでもいいのだが、結婚の部分はかなり真剣であった。それはアイオロスのみならず、現教皇・シオンも切望していることである。理由はもちろん、一刻も早くアイオロスに教皇職を継がせるためで、それにはサガの存在と助力が必要不可欠であるからだ。

「バカも休み休み言え。それでは結局私が何もかもをやらねばならなくなるだろう。それだったら私自身が教皇職を継いでしまった方が、よっぽど早い」

現実問題として、アイオロスが1人で今すぐ教皇職を継ぐにはまだ無理がある。だからこそ、シオンはサガとアイオロスとを結婚させて、アイオロスの後ろでサガに手綱を引かせようと目論んでいるわけだが、サガの方とてそうそうシオンの思い通りになるつもりはなかった。そんなことをしたら、自分の気苦労ばかりが増えるのは目に見えているのである。それならばよっぽど自分自身が教皇になってしまった方が、気が楽を言うものだ。無論、どんなに請われたところで再び教皇職に就く気など、サガには毛頭無いのだが。

「私は別にそれでも構わんがな」

サガが教皇職を継ぐことを固辞している理由は、アイオロスも嫌というほど知っている。だから自分が次期教皇となることを承諾したわけだが、実のところこれも渋々で、万一サガがその気になったらいつでも次期教皇の座ををサガに譲り、自分がその補佐役に回るつもりで居たのだ。

「そうか。そうなったらお前は1人でこの仕事をこなさねばならなくなるな。思う存分、こき使ってやるぞ。その分私が楽できるのだからな」

冗談混じりに言ってサガは笑ったが、裏を返せばやはりその気が無いと言うことを念押ししているも同然だった。

「勘弁してくれ。そんなことになるくらいなら、今の方がまだマシだよ」

心底嫌そうに顔を歪めて、アイオロスは情けない声を出した。それならば仕事とは言え、ずっとサガと一緒にいられる今の方が、まだしもマシと言うものである。そんなアイオロスの様子に、サガはアイオロスにはわからないように忍び笑いを洩らした。

「この忙しさも明日の礼拝が終わるまでの辛抱だ。まぁ、片付けやら何やらの後始末はあるが、明日の夜には自宅へ帰ってゆっくりできるだろう」

サガは仏頂面のアイオロスを宥めるようにそう言った。と、言ってもそんなに早い時間に帰れるわけでもないだろうが、少なくとも日付を跨ぐようなことにはならないはずだった。

「明日の夜ね……」

それでは、もうクリスマスは終わったも同然である。アイオロスはコーヒーカップをソーサーに戻して、力なく溜息をついた。

「明日の夜じゃ、どうせ誰も居なくなっちゃうしな。アイオリアは日本に行っちゃうし、シュラはカミュと一緒にフランス行くって言うし、デスマスクもやっとの思いでアフロディーテ口説き落として、スウェーデンでクリスマス過ごすって言ってたし、シャカは仏教徒だから関係ないし、カノンとミロは双児宮でラブラブだって言うし、シオン様ですらムウとアルデバランと貴鬼連れて五老峰で老師達とクリスマスパーティーだぜ」

他の連中がそれぞれに楽しい予定を抱えていることを一気に羅列して、アイオロスは盛大に溜息をついた。実弟アイオリアは恋人・魔鈴に会うために日本に行くし、一番可愛がっている後輩のシュラも、やはり恋人のカミュとカミュの故郷・フランスでデートだと言っていた。デスマスクも涙ぐましい努力の末、何とかアフロディーテを口説くのに成功して、これまたアフロディーテの故郷・スウェーデンでクリスマスを過ごす予定だ。シャカは仏教徒なので基本的にクリスマスにも礼拝にも無関係だし、ミロとカノンはどこにも出かけはしないものの、双児宮で2人初めてのクリスマスをゆっくり過ごすと言う。おまけにシオンまでもが、礼拝後には愛弟子ムウとその恋人・アルデバラン、そして孫弟子に当たる貴鬼を連れて、五老峰の童虎のところで旧交を暖め合うのだと言う。最も紫龍も来ると言うのだから、旧交を暖めあうというよりは、弟子の自慢大会になるのであろうことは目に見えているが。

いずれにせよ、楽しい予定が無いのはアイオロスだけである。サガも自分と同じような思いを抱いていてくれれば話は早いのだが、仕事優先主義のサガにそれを求めるのは無理な話であった。

「いいではないか。シオン様と老師様など、一緒にクリスマスを楽しむのはそれこそ243年ぶりなのだからな」

アイオロスの物言いに、サガは思わず苦笑した。

「それはまぁ、そうなんだけど……。私なんか帰って寝るだけだからな。そう思うとやっぱ淋しいっつーか、つまんないよな」

アイオロスは頭の後ろで手を組んで、椅子の背に凭れてつまらなそうに天井を仰いだ。

「そうか……ならば明日の夜は人馬宮に泊めてもらうとするか」

だがアイオロスの文句にさり気なく応じて返したサガの言葉に、アイオロスは椅子から転げ落ちそうになるくらい驚いた。

「サッ、サガ?!」

思わず自分の幻聴かと疑ってしまいたくなるほどに、意外なことであった。サガが……サガの方からそんなことを言い出すなど……。アイオロスは執務机に身を乗り出して、信じられない思いでサガを凝視した。

「カノンとミロの邪魔をするわけにはいかんからな。私は明日もここに泊まる気でいたのだが、お前さえよければ……」

サガが皆まで言わぬうちに、アイオロスが物凄い素早さで執務机を飛び越え、サガの正面に立った。そして有無を言わせずその両肩を掴み、

「もちろんだ!、もちろんだ、サガ!。ここになんぞ泊まるな!ウチに来い!。いや、ウチに来てくれ!!」

必死と歓喜が入り交じったような形相で、訴えるように捲し立てた。気紛れでも何でもいい、とにかくサガがその気になってくれたことが、アイオロスには嬉しかった。今の今まで持っていた不満も、一気に吹き飛んでしまったくらいである。

サガは小さく微笑みつつ、仕方がないなと言うような表情を作って頷くと、アイオロスは歓喜の声を上げながらいきなりサガを抱き締めた。

「ちょっ……アイオロスっ!」

アイオロスは気付いていなかったが、サガももちろん最初からそのつもりでいたのである。ちょっと焦らして遊んでいただけなのだが、思いの外派手に喜ばれてしまった揚げ句にこんな行動に出られては、自分が蒔いた種とは言えさすがに面食らわざるを得なかった。

「離せ!、ここをどこだと思ってる!」

サガはアイオロスの腕の中でもがいたが、アイオロスの抱く手の力の方が強く、容易には振りほどけなかった。

「大丈夫。こんな時間にここに入ってくる奴なんかいないって」

アイオロスの方は全く気にもせず、更に嬉しそうにサガの身を抱いた。

「だからそう言う問題じゃな……」

「あっ!!」

サガがアイオロスを無理やり引き離そうと小宇宙を燃焼し始めた途端、アイオロスが大きな声をあげてパッとサガから身を離した。アイオロスが早々に自分の身を放してくれたことにホッとしながらも、何事が起きたのかとサガはアイオロスの顔を見た。

「どうした?、アイオロ……」

「雪だ!」

アイオロスの視線は、サガが背にしている窓の方を向いていた。

「えっ?」

「雪だ、サガ!、雪だよ!」

子供のようにはしゃいで、アイオロスは窓際に駆け寄った。

「雪?」

サガが振り向いて窓の外を見遣ると、確かに雪がはらはらと舞っていた。少し驚いたように目を瞠ってから、サガも窓際へと向かう。

「珍しいなぁ〜、12月のうちに雪が降るなんて」

ギリシャでももちろん冬に雪は降るが、12月のうちに降ることは珍しい。アイオロスは窓を開け、13年ぶりに見る雪にまるで少年のように目を輝かせた。

「ホワイト・クリスマスってやつか。生まれて初めてだな」

漆黒の空から舞い落ちる真っ白い雪を見ながら、感慨深げにアイオロスは呟いた。元々アイオロスはロマンチストではないが、クリスマス・イヴの夜、しかもサガと2人きりと言う状況下では、さすがにそんな気分にもなろうと言うものであった。

これが仕事中で、しかも教皇宮の政務室などと言うムードのない場所じゃなければ、最っ高のシチュエーションなんだけどなぁ……などと不埒なことを思いつつ、アイオロスは隣のサガを省みた。サガもアイオロスと同じように暗い空を見上げていたが、やがて小さく吹き出すと、くすくすと楽しげに声を立てて笑い始めた。

「サガ?、どうした?」

突然笑い始めたサガをアイオロスは訝しげに見つめ、何事かと聞いた。

「いや、何でもないよ」

だがサガはそう短く答えただけで、他には何も言わなかった。アイオロスは腑に落ちなそうに小首を傾げたが、すぐにそんなことを忘れて再び空を見上げる。

「なぁ、サガ、これってさ……」

「うん?」

アイオロスが、そっとサガの肩を抱いた。サガは反射的に身を引こうとしたのだが、アイオロスの手の方が一瞬早かった。先刻同様、こんなところで……とも思ったのだが、結局はそのままアイオロスのするがままに任せたサガであった。

「これってさ、神様からのささやかなクリスマスプレゼント……かなぁ?」

柄にもない台詞を吐きながら、アイオロスはポリポリと空いている手で鼻の頭を掻いた。どうやら自分で自分の言った言葉に照れているらしい。そんなアイオロスの横顔を見ながら、サガは愛おしげに目を細めた。

「ああ、そうかも知れないな……」

素直にそう応じて、サガは頷いた。

「せっかくだから積もればいいなぁ……雪だるまが作れるくらいまでに」

すっかり少年の顔に戻ったアイオロスが明らかにわくわくしながら言うのを聞いて、サガの内側から再び笑いが込み上げてくる。本当に、こう言うところは子供の頃からちっとも変わっていない。

「何が雪だるまだ。子供みたいなことを……」

サガは呆れたように言ったが、表情は口調とは全く正反対のものであった。

「いいじゃないか。この時期に雪が降るなんてまず滅多に無いし、どうせ降ったなら積もってくれた方がいいし、積もったなら雪だるまの1個も作りたい」

これが28歳、次期教皇になる者が言うことだろうか?と思わなくもないが、そんなところがアイオロスらしいと言えばアイオロスらしかった。そしてアイオロスのそんなところがサガは好きでもあり、もちろんそれを自覚してもいた。

「さぁ、明日の楽しみが出来たところで、仕事に戻ろうか?、アイオロス」

いつまでも雪を見ていては際限が無い。明日のささやかな楽しみのため、今日やるべきことはしっかりとか片付けておかねばならないのだ。サガは現実に立ち返って、アイオロスを促した。アイオロスは名残惜しげな表情を一瞬だけ閃かせたが、すぐに黙って頷いて、静かに窓を閉めた。

自分の執務机の方に戻りながら、サガはアイオロスにわからないよう、十二宮の一画に密かにテレパシーを飛ばした。

『そう言うわけだ。すまんがカミュ、雪だるまが作れるくらいまで、適度に雪を積もらせておいてくれ』





「………どうやらサガには、しっかり見抜かれてたらしいな」

宝瓶宮のリビングでサガのテレパシーを直に受けたカミュは、表情を殆ど崩さぬままにボソリと呟いた。

「ありゃ……やっぱり……」

それを受けて、シュラが苦笑交じりに声を上げた。

「恐らく、雪に僅かに残留している私の小宇宙を感知したんだろう。最大限、小宇宙は押さえたつもりだったのだが、やはりサガの目は誤魔化せなかったな」

ある程度、予測していないことでもなかったので、カミュは表面上は落ち着き払って言った。そう、今聖域に降っている雪は自然降雪ではなく、カミュが人工的(?)に降らせているものだったのである。よって当然、雪そのものにカミュの小宇宙が付随しており、カミュの推察通り、サガは敏感にその小宇宙を感じ取ったのだった。

何故そんなことをしたのか?。答えは簡単、シュラに頼まれたからである。

アイオロスを兄とも師とも慕うシュラが、生き返って初めてのクリスマスだと言うのに、仕事仕事でそれどころの騒ぎじゃないアイオロスを見るに見かねて、せめてものクリスマスプレゼントにでもなればと、カミュに頼んでホワイト・クリスマスを演出してもらったのである。サガと2人きりの時に、ロマンチックな気分の1つでも味わってもらえれば……と言う気持ちからであった。

「まぁ、アイオロスはそう言うの鈍いから大丈夫だとは思ったけど、やっぱサガには気付かれたかぁ〜。となると、成功した……とは言い切れないな」

種明かしをしてはそもそもの意味がないので、2人はここまで内緒で事を運んできたのだが……一方のサガにこうもあっさり看破されたのでは、とても成功とは言い難かった。元々鈍いところにあるアイオロスについては心配していなかったものの、確かにサガには見破られる可能性は高いと危惧してはいた。だがまさかこんな短時間であっさり見破られるとは思っていなかっただけに、その点では多少なりとも認識が甘かったと言わざるを得ない。

「でもアイオロスは喜んでいるようだし、サガもこのまま黙っててくれるつもりのようだ。貴方の気持ちは、まずは達せられたと言ってもいいだろう」

アイオロスに気付かれぬよう、密かに直接自分にテレパシーを送ってきたことで、サガの内心は一目瞭然である。となると、アイオロスを喜ばせたい……と言うシュラの願いは、正当に報われたと言えなくもない。

「まぁ、それもそうかも知れないけど……」

曖昧気味に言葉を濁しつつ、シュラは微苦笑を溢した。

「いずれにせよ、アイオロスのことはこれからも心配はいらないだろうが、サガに気付かれてしまったのならもう遠慮はいらないな。雪だるまが作れるくらいまで充分に雪を積もらせてくれと、サガにも頼まれたことだし、小宇宙を解放してもっと強く雪を降らせるとしよう」

カミュは静かに目を瞑ると、小宇宙を高め始めた。アイオロスはもちろん、なるべくならサガにも自分の仕業と気付かれたくなかったので、カミュは今の今まで小宇宙の燃焼を最小限に抑えて雪を降らせていたのである。小宇宙は爆発させるよりも、小さく押さえる方がある意味では大変なのだ。今のままでは、はらはらと舞い落ちる程度にしか雪を降らせることは出来ないが、バレてしまった以上はもう気兼ねをする必要はない。遠慮なく小宇宙を全開にして、思う存分降らせられると言うものだ。

「ブリザード起こすんじゃないぞ」

カミュが本気を出したら降雪はブリザードになるので、シュラは小さく笑って先に釘を打っておいた。当たり前だ!と応じながら、カミュは小宇宙を徐々に高めていく。

窓の外にしんしんと降る雪がカミュの小宇宙の高まりに呼応してその勢いを増し、聖域全体を純白に染め変えていった。


END

【あとがき】

一度はやってみようと思っていたホワイト・クリスマスでしたが、ただひたすら、まったりしてるだけの話になってしまいました(^^;;)。
もっとラブラブ〜な2人を書きたかったんですけどね(笑)。何て事ない、のんびりしてるだけの下らない話ですみません。


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