【Count 5】2月9日:Confirmation
シャカは宣言通り、前日とほぼ同じ時間に獅子宮に現れた。
昨日と違っていたのはシャカが手ぶらだったことくらいだが、14日当日までまさか毎日プレゼントを贈られるのではないだろうか? と懸念していたアイオリアは手ぶらのシャカを見て少しだけホッとした。
さすがに毎日プレゼントを贈られたら、いくら気にするなと言われても無理だからである。
だが――
「アイオリア、お前は私のことをどう思っている?」

「は!?」

やって来るなり開口一番そんな問いを投げつけられ、アイオリアは間抜けな声を上げて目を丸めた。

「だから、私のことをどう思っているのだと聞いているのだ」

「どう思ってるって……えっ……?」

今更それを聞くか!? とは思ったものの、問いつめてくるシャカの得体の知れぬ迫力に押されその一言は言えなかった。

「アイオリア」

早く言え! と急かすようにシャカはアイオリアの名を呼んだ。

「好き……です」

本当に今になって何故改めての告白を強いられるのかまるでわからなかったが、とてもじゃないがそんなことを聞き返せる雰囲気ではなく、アイオリアはシャカに促されるまま何故か微妙に敬語で自分の気持ちを彼に告げた。
それを聞いたシャカは珍しくはっきりと嬉しそうに微笑みながら頷き、

「そうか。私もだ」

さらりとそう告白返しをしたのだった。

「えっ! あ、ありがとう……」

あまりにさらりと言われて面食らったアイオリアは、咄嗟にシャカに礼を言ってしまった。そもそも礼を言う筋合いはないと言うかおかしな話なのだが、反射的に口をついて出てしまったのだから仕方がない。
アイオリアから意味不明に礼を言われたシャカはと言えば、別に礼などは期待していなかったろうがだからと言っておかしいとも思わななかったようで、満足そうに頷くとまたいきなり踵を返して獅子宮を後にしようとした。

「ちょっと待ってシャカ!」

アイオリアが慌てて呼び止めると、シャカは立ち止まってアイオリアの方を顧みた。

「今日ももう帰るのか?」

「ああ」

「それじゃ帰る前にこれだけ。今日は何の日……だったんだ?」

昨日シャカはバレンタイン当日までの一週間、毎日決められたものを贈ったり行事をこなしたりすると言っていた。
今日は特にプレゼントはなかったし、となるとつまりさっきのあのアイオリア的には意味不明なやり取りが今日こなすべき『行事』に当たるのだろうが、それが何なのかがやっぱりさっぱりわからないのである。

「今日はプロポーズ・デーと言って、相手に自分の気持ちを告白する日だそうだ」

「告白する日……なるほどそれであんなこと……」

既に互いの気持ちを確かめ合ってる者同士で改めて告白する必要があるのだろうか? というそもそも論はあるものの、とりあえずまるで意味不明だった今日のシャカの言動の理由がわかってすっきりしたアイオリアであった。

「明日、また来る」

そして昨日と同じセリフを残し、シャカはアイオリアの返答も待たずに帰って行った。

「明日は一体何が来るんだろう……?」
そしてアイオリアもまた昨日同様、その場に佇立したまま呆然と呟くことしか出来なかった。

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